FX比較のこんな場合
乗数はマイナスであって、公共投資の使い道がまったく無意味なものであれば、その値はマイナスにさえなり得る。
不況期に公共投資が行われるさいには、〈供給側の経済学〉が前提としているように、失業がないとは思えない。
また、たとえ失業があっても、不況期には人は将来に不安を抱えて消費意欲が萎え、貯蓄意欲が高いため、消費性向は小さい。
このとき、前項に示したって、当初の公共投資を超える波及効果の部分は、ほとんどなくなる。
したがって、〈需要側〉の考え方に立っても、不況期は乗数効果がもっとも効かない時期であり、このときには乗数は1である。
実際、公共投資に対する批判のうちでもっとも多く見掛けるものは、景気への影響は非常に限られたものであり、単なるカンフル剤であって、一時的に公共投資分の雇用を生み出すだけで止めればすぐに元にもどってしまうから、意味がないというものである。
それでは、公共投資は景気刺激にまったく効果がないのであろうか。
有効需要が不足している不況期には、財市場や労働市場の物余り人余りによって、物価や賃金率はデフレ気味になる。
デフレ気味になれば、物の購入は待てば待つほど有利である。
そのため、人は不要不急のものは買い控える。
不況に拍車を掛けているのである。
このような状況のもとで、大幅な公共投資によって失業者を雇えば、労働市場の需給は好転する。
その結果デフレ基調が弱まれば、人の買い控え傾向も弱まり、消費が上向いてくるであろう。
逆にいえば、労働市場の需要不足を目に見える形で改善し、デフレ傾向を押しとどめるほどの雇用増をともなうような、大型の公共事業でないかぎり、消費刺激などの波及効果を生み出すような、景気刺激策にはならないのである。
このような大規模な公共事業の実施に関して合意を得ることは、政治的にも、またその資金調達という意味からも、大変困難であろう。
さらに、そのような大型の公共事業を行っても、それによってできあがったものが、その後新たな需要を喚起するようなものでないかぎり、公共事業を止めれば、雇用はもとの水準にもどってしまう。
したがって、〈需要側〉の考え方に立っても、公共事業の景気刺激効果には、たいして期待することはできないことがわかる。
伝統的ケインジアンによる乗数効果への過信は、公共投資に関していろいろな弊害をもたらす。
まず、公共投資が景気刺激効果を持つのは、失業者の所得が上がるからであるという考え方では、公共投資の中身はどうでもよくなり、政府が支出すること自体が意味を持つ。
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